隔週刊 釣り雑誌「つり丸」掲載コーナー
つりぐるめ
第2回 空飛ぶ魚?黒潮の申し子カツオ
グルメドキュメンタリー・フォトストーリー
カツオの藁焼き

カツオの藁焼きで乾杯!

初ガツオの藁焼きや小川たたき、一本釣りの話など、カツオ料理を囲む人々の会話を紹介します。

今回の主役:カツオ
カツオの藁焼き、皿鉢盛り、小川たたき、手ごね寿司、マゴ茶、酒盗、ハラス塩焼きなど、さまざまな料理とともに、一本釣りの魅力を紹介します。

今回の登場人物

マスター釣り好きの料理人。経歴不詳。オヤジまたはマスターと呼ばれる。
甘木大の釣り好きで食いしん坊。赤いバンダナがトレードマーク。かなりの酒好きでアル中気味。
里美釣りはしないが料理好きで、特に魚が大好き。遠距離恋愛中。
雑賀(さいか)家でも料理をふるまう愛妻家。甘木と出会い釣りを始めたばかりの初心者だが情報は詳しい。
雑賀ママ雑賀の奥さん。生魚が食べられなかったが、雑賀の釣った魚を食べて魚好きになる。
会話の色分け:● マスター● 甘木● 里美● 雑賀● 雑賀ママ

マスターが釣ってきたカツオ

雑賀(さいか):マスター、いらっしゃい。今日は早いね。
カツオの藁焼き
カツオの藁焼き
マスター:あぁ、そうだったね。でも、これだけなんだよ。
雑賀ママ:えっ、どうしたの。なにそれだけが釣れたの?
料理を囲む会話
料理を囲む会話
マスター:サメにね。やられちゃったんだよ。全くイヤになっちゃうよ。
藁焼きの炎
藁焼きの炎
雑賀(さいか):じゃ、カツオのたたきはなしかぁ。
マスター:ごめんね。でも楽しかったよ。こんなこともあろうと思って。はい、カツオの当座煮。
カツオの皿鉢盛り
カツオの皿鉢盛り
雑賀ママ:煮物?たたきと比べちゃうと地味ね。
マスター:まあ、そう言わずに食べてみなよ。
雑賀ママ:マスターがそう言うんなら。
カツオの当座煮
カツオの当座煮
雑賀夫婦:美味しい。
雑賀(さいか):もっとパサパサかと。
マスター:煮る前にカツオの繊維をつぶして、サラダ油を数滴まぶしたからね。しっとりと仕上がってるでしょ。
カツオの小川たたき
カツオの小川たたき
雑賀ママ:ほんと、甘辛くておいしい!白いご飯が欲しいわぁ。
マスター:「当座は保存がきく煮物」という意味だけど、これなら「当座のつまみは大丈夫」だね。

カツオの藁焼きで乾杯!

里美:マスター、何やっているんですか?
カツオのお造り
カツオのお造り
マスター:カツオの藁焼きだよ。美味しいカツオが食べられるよ。
里美:わー、楽しそう。BBQみたいですね。
雑賀ママ:ものすごく熱い。この後のビールが美味しそう。
銀皮造り
銀皮造り
マスター:この強烈な炎がカツオを旨くするんですよ。さぁ、氷水で身を〆て皿鉢に盛り付けますね。
甘木:みんなで食べよう。それが皿鉢料理の楽しみだからな。マスター、ビールもおかわりね。
雑賀ママ:私も生ビールちょうだい!
カツオの調理
カツオの調理
マスター:さぁ、できましたよ。カツオの皿鉢盛りです。
里美:身が厚くて美味しそう。
甘木:カツオのたたきは、厚く切らなきゃな。上品に切ったら旨くない。
カツオの手ごね寿司
カツオの手ごね寿司
マスター:本当は初ガツオはたたきにしないんですが、リクエストがあったので特別ですよ。
雑賀(さいか):何で初ガツオでやらないんですか?
マスター:戻りガツオに比べて脂ののりがイマイチでね。でも、今年のカツオはいい脂を持っているね。これなら旨いと思いますよ。
料理の盛り付け
料理の盛り付け
雑賀ママ:とても美味しいわよ。このたたき。戻りガツオはもっと美味しいの?
甘木:好みにもよるけど、あっさり系は初ガツオ。こってり系は戻りガツオかな。

江戸時代のカツオ料理「小川たたき」

里美:まるでラーメン屋さんね(笑)。
カツオのマゴ茶
カツオのマゴ茶
マスター:せっかく初ガツオを頂いたんで、江戸時代の料理を作ってみますよ。
雑賀(さいか):江戸のカツオ料理ってあの「なんとかたたき」のことですか?
マスター:良く知っているねぇ。その通り「小川たたき」って言うんだよ。
一本釣りの様子
一本釣りの様子
甘木:何だい、その「小川たたき」ってのは?小川さんが作ったのかい?
雑賀(さいか):違いますよ。思い出しました。お湯が流れる様子が小川のようだから、そう命名されたそうですよ。
里美:さすが雑賀さん、詳しいですね。
釣り船の様子
釣り船の様子
マスター:まず、カツオをアジのようにたたきます。細かくなったら、塩を軽く加えてさらにたたくと粘り気が出てきますから、それを薄く広げてお湯をかけるんです。そうするとそこが白くなる。コントラストがきれいでしょう。和からしか、煎り酒でお召し上がりください。
マスター:はい、できましたよ。こちらが「小川たたき」です。
雑賀ママ:これが、たたきなの?斬新!
カツオの酒盗
カツオの酒盗
甘木:初めて食べたけど、これは斬新だ。旨いねぇ。
雑賀(さいか):口の中でカツオがほどけますね。こりゃ、旨い。特に梅の風味が効いている煎り酒が最高ですね。
甘木:「女房を質に入れてでも」とは、良く言ったもんだと思ってたけど、江戸の人は、カツオの旨い食べ方を良く知っていたんだなぁ。
ハラス塩焼き
ハラス塩焼き
雑賀ママ:本当ね。私も注意しないと(笑)。

カツオは空を飛ぶ? 一本釣りの話

甘木:里美ちゃん、カツオは空を飛ぶんだよ。
里美:甘木さん、もう酔っぱらっちゃったんですか?
カツオをさばく様子
カツオをさばく様子
甘木:あはは、そんな訳ないだろ。飛ぶといっても一本釣りのことだけどね。
里美:それならテレビでみたことあります。
雑賀(さいか):ボクもありますよ。確かに飛んでいますね。
カツオの切り身
カツオの切り身
甘木:実際に見ると凄いよ。突然、船が突っ走ったかと思うと、急停止して、すぐに激しく海に散水するんだ。そうすると、どこからともなく海鳥の大群がやってくる。さらに散水を続けるとイワシが海面で暴れだす。下からカツオに追われて海面へと逃げてるんだよ。
甘木:船長は船の舳先で竿を出してカツオを釣り上げる。釣れたカツオが空を舞って船の上に降ってくるんだよ。
雑賀ママ:なんか怖い気がする。
調理の手順
調理の手順
甘木:大型船の漁師さんは、ヘルメットかぶっているよ。
里美:それで空を飛ぶって言ったんですね。
甘木:一度に何本も飛んでいるときもあるんだよ。
食卓の様子
食卓の様子
雑賀(さいか):釣ったカツオはどうするんですか?
マスター:船に貯蔵庫があってね。そこに入れておくんだ。氷でビッチリ〆てね。

手ごね寿司・マゴ茶・酒盗・ハラス塩焼き

マスター:手ごね寿司ですよ。せっかくですからね。
カツオ料理
カツオ料理
里美:何ですか?手ごね寿司って?
マスター:チラシ寿司とほぼ同じだよ。美味しいから待っててね。
雑賀ママ:わぁ、美味しそう。
藁焼きの様子
藁焼きの様子
雑賀(さいか):本当に美味しそうだ。本格的ですね。
甘木:オレも少し頂こうかな。
マスター:たくさん食べてくださいよ。
カツオの造り
カツオの造り
甘木:うん、旨いね。やっぱり新鮮なカツオは旨い。
マスター:そうですね。鮮度が命の魚ですからね。
里美:マスターの腕も、もちろんあると思いますよ。
皿鉢料理
皿鉢料理
甘木:カツオは難しいからなぁ。
雑賀(さいか):そうなんですか。体型的にそれほど難しい魚でもないのかと。
甘木:とにかくできるだけ身に触れないことが大事なんだ。
カツオの調理風景
カツオの調理風景
マスター:身割れしやすいので、扱い方も丁寧にやらないと。頭側を下にして縦に持って、尾の方から中骨に沿って包丁を入れるのがカツオならではの切り方なんです。
甘木:その方法なら、身に手が触れないからね。
雑賀(さいか):さっきの切り方ですね。凄い技術です。それに理にかなっている。料理人の知恵ですね。でも、マスター、これ酢飯じゃないでしょう。
手ごね寿司
手ごね寿司
甘木:良く気が付いたね。雑賀くん。
マスター:ガリをざく切りにして、漬け酢も一緒に加えて酢飯にしたんだよ。
雑賀ママ:さすがマスター。今度、ウチでもやってみるわ。
料理を囲む人々
料理を囲む人々
甘木:手ごね寿司も旨いけれど、オレはマゴ茶がいいや。マスター、〆にマゴ茶を頼むよ。ほうじ茶でね。
マスター:あれ、もう〆ですか?
甘木:朝が早かったからね。一本釣りもやって疲れたよ。
酒盗の仕込み
酒盗の仕込み
里美:お酒好きの甘木さんらしくないですよ。もう少し飲みましょうよ。
雑賀ママ:そうそう、飲もう、飲もう。
甘木:そうかぁ。じゃあ、レモンサワー薄めで。マスター。
ハラスの塩焼き
ハラスの塩焼き
マスター:あれ、マゴ茶できちゃいましたよ。
甘木:相変わらず仕事速いなぁ、マスター。じゃ、やっぱり食べて帰ろうかな。
里美:大丈夫。私が食べます。
カツオ料理の写真
カツオ料理の写真
甘木:おいっ、オレのマゴ茶。
マスター:はい、甘木さん、レモンサワー薄め。
甘木:やっぱり、レモンサワーは旨いね(笑)。
甘木:そうだ、前に作っていたハラスの塩漬けはもう食べちゃった。
マスター:あれですか。まかないで食べようと思っていたんですがね。
甘木:そのカツオでまた作ればいいじゃない。焼いてよ。
マスター:仕方ないなぁ。今がちょうど食べ時ですよ。
雑賀(さいか):それボクにもください。食べたことない。
甘木:ママに叱られるぞ。塩分の摂り過ぎだからね。
雑賀(さいか):マスターがまかないにするぐらいだから、さぞ美味しいんだろうなぁ。
雑賀ママ:仕方ないなぁ。ちょっとだけよ。
甘木:まるでカトちゃんだな。
マスター:焼けるまでこれを食べていてください。こちらも食べ頃ですから。一晩、旨い焼酎に漬けてから塩漬けにしたのでバッチリの味加減に仕上がっていますよ。
甘木:おっ、酒盗だな。これは旨そうだ。マスター、レモンサワー薄めで。
雑賀(さいか):酒盗って塩辛ですよね。日本酒の方がいいんじゃないですか?
甘木:いいんだよ。もう夏だからさわやかにね。
雑賀(さいか):ふーん。マスター、僕は日本酒ください。
マスター:はいよ。でも雑賀ママが酒盗を食べていいって言うかなぁ?
雑賀ママ:私、大好物なの。ちょっとだけよ。
雑賀(さいか):やっぱり、日本酒にピッタリですね。
マスター:さあ、焼けたぞ。はい、カツオのハラス塩焼きできましたよ。
甘木:おぉ、これは旨そうだ。焼きたての熱々が最高。
マスター:もうすぐ手ごね寿司もできますから、ハラスと一緒に食べてください。

料理のポイント

誌面に掲載された調理手順

カツオの藁焼き:サク取りしたカツオを藁の強烈な炎で焼き、素早く氷水につけて粗熱をとり、水気を拭き取る。

小川たたき:①カツオを包丁でたたき、軽く塩を加えてさらにたたく。②たたきを5mmほどの厚さに広げ、まな板を斜めにし、上からお湯を全体にさっとかける。

酒盗:①胃袋などを塩もみしてよく洗う。②適当な大きさにきざみ、焼酎に一晩漬けてから水気を拭き、塩を振る。

ハラス塩焼き:ハラスを塩漬けにしてから冷蔵庫で寝かせる。一週間から一ヵ月が食べ頃。

誌面クレジット
料理人:兼子 佳大 / 撮影:池川 一夫 / デザイン:今井 里美 / プロデュース:盛川 徹

協力:焼き鳥 さいか
住所:千葉県市川市欠真間 2-19-16
TEL:047-727-8120
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