つりなび仕立て 釣行レポート |
  第9回[大原]力漁丸マダイ 開催日:2004年4月24日 |
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力漁丸の大船長 中井力男船長は、真鯛を釣らせたらこの人の右に出る者はいないというほどの達人。漁師仲間に「リキやんは鯛に無理やり餌を食わせる」と言わしめたほど。それもそのはず紀州雑賀崎から旅船でやってきた真鯛釣り集団の末裔。真鯛にかける情熱は大変強い。現在は大船長自身が真鯛釣りの船を出す機会は少なくなったが、その技術は中井聡船長に受け継がれている。
写真・文 盛川徹 |
真っ赤な日輪が西の海に沈みかけ辺り一面を赤く染めている。海上には心地いい風が吹いている。外房にしてはめずらしくうねりも少ない。かもめが一羽はぐれたのかナダに向かって飛んで行く。煙草をふかしながらビシマ糸を手繰っていると、突然 手首をひったくられるような魚信。素早く手繰ると二手目で手が止まる。「喰ったぞ!でかいよ!」まぎれもなく大鯛の引きだ。強烈な引き。ビシマ糸が10mも持っていかれる。何度かの突っ込みをうまくかわしながら上げてくる。後20m、上がってくるに従い足がガクガクと震える。真っ赤に染まった海面にうっすらと青白い影が見えた。「マダイだ!」...。 前日、「白い巨塔」の財前助教授のように、ワグナーの「タンホイザー」序曲をBGMにしてイメージトレーニングをしてみた。最近、大鯛を釣っていないためその感覚を忘れかけていたし、イメージ通りに釣りができればこんなに嬉しいことは無い。ただ、財前助教授の場合は、失敗したら患者が死んでしまうが、真鯛釣りは失敗しても坊主になるだけのこと。そう考えると一緒にしたら大変失礼だが、こちらは気が楽だ。 大原港に着くとちょうどアカイカに出ていた中井力男船長の船が帰ってきた。船長に挨拶すると開口一番。「昼近くになって水温が下がっちまったおう。おめえが来たからかねぇ。おえねえおぉ!」との言葉。南西風が吹くと大原沖の水温はたちまち下がってしまう。この日も朝は15℃以上あった水温が昼近くには14℃台に落ちてしまった。すぐに真鯛で午前船を出した船宿に電話をすると、少ないが何枚かは大型が上がった模様。あまり調子は良くないようだが、やってみなければわからないのが釣りの面白さだと気を取り直して出船することにした。 大船長の船は午後もアカイカで出船するとのことなので、聡船長の船で出船。行程約30分の大原沖は風が少し強くなってきたためか、少し波がでてきていたが、釣りには差し支えない。水深約60m。ビシマ道具を入れると糸が真っ直ぐに立つ。潮も行っていないようだ。案の定アタリがない。普通はウマヅラやベラなどの餌取りがエビをつつく感触があるのだが、何も感じない。不思議に思い仕掛けを上げてくると中層で突然重くなった。「なんだオマツリか?」と思い、辺りを見回すがオマツリしている気配もないため、そのまま上げてくるとマサバ。どうやら中層にはサバが群れているようである。 その後も外道のアタリも出ないため船長はこの場所を諦め移動。水深は少し深くなって約70m。潮は先ほどの場所とは違い少し速い。潮温は少し上がったとのことで期待が持てる。しかし、ここでもアタリは遠い。回収したカブラは冷たく、底潮の水温はここでも冷たいようである。カブラをベタ底にしたり、10mぐらいまで浮かせたりするがアタリがない。こんなに何にもアタリがないのは本当に珍しい。いつもなら真鯛は上がらなくてもホウボウやウマヅラ、アイナメなどが船上にいくつかは上がるのだが、この日は先ほど釣ったマサバだけ。本当におかしいのだ。 |
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首をかしげながら手繰っていると、右手にガッガッと魚信があった。素早く手繰るとグッと魚の感触が伝わる。掛けた瞬間は、かなり持っていく感触があった。待ち望んでいただけに「来たよ〜!」と思わず叫んでしまった。10mほど上げたところで、フワッと軽くなった。一瞬、バレたか?と思うがすぐに重たくなる。バレてない。しかし、重たいのだが真鯛のようにグイグイ持って行く感じはない。「真鯛じゃないねぇ。ホウボウかねぇ」と話しながら上げてきた魚はクロアナゴ。約60cmと東京湾の巨大クロアナゴには及ばないがあの幼魚だろう。聡船長は「こんなにちっせぇクロアナゴは見たことがねえ」と言っていたが、巨大クロアナゴだって最初からあんなに大きい訳はないのだから、この程度のサイズがいたっておかしくはない。ビシマがいかに万能とは言えクロアナゴを釣ったのは初めてだし、まして釣っているのを見たこともない。外道のアタリもなく本当に変な日である。 |
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ふと気がつくと、さっきからどこかで「ジィ〜ジィ〜」と変な音が聞こえてくる。最初は気にならなかったのだが、気にしだすとかなり耳障りだ。エンジンを停めている船上はとても静かなため余計にうるさく感じる。「何の音だろうねえ」と話をしていると右舷ミヨシにいたお客さんが突き出しの竿掛けに立ててあった竿を見に行った。竿を手に取ると音が止まった。しかし、戻すとまた「ジィ〜ジィ〜」と音がする。どうやら竿が何かで振動しているようである。竿を横にして置くとその不思議な音は止まった。どうしてこんな話を書いたかと言うと、沖上がりの少し前に聡船長が「ルアーをやってたお客さんがビリビリするって言ってたらしい」という話しを聞いたからだ。船長は「電磁波が発生していたらしい」と言っていたが、こんな体験は初めてとのことだ。他の船長との無線でも「こんなことは初めてだ」ということであった。どうやら電磁波の影響で竿に電気が走り「ジィ〜ジィ〜」と振動音を出していたらしい。竿を持ったお客さんは持った時には別段、感電したような感じはなかったと言っていたが、別船のルアーのお客さんは感電していたのであろうか?とにかくビリビリしていたらしい。外道も口を使わないし、クロアナゴは釣れるし、やはり電磁波の影響であろうか? 結局この日は、この後も状況は変わらず沖上がりとなった。何日か前に南西の強風が吹き水温が下がってしまっていることもあるが、恐らくそれだけではないだろう。なにせ外道も口を使わないほど酷い状況は今まで遭遇したことはなかったのだから。恐らく電磁波の影響で魚に食い気を起こさせなかったのだろうと勝手に思っているのだが真相はいかに。 5月も中頃になれば水温も安定してきて少し本格的な乗っ込みシーズンがやってくる。もちろんこの時期でも真子をたっぷりと持ったお腹パンパンの真鯛が喰ってくる。その時期にもう一度チャレンジする予定だ。つりなび仕立てでまだ大型のマダイは出ていない。誰が最初に大鯛を釣り上げるか!皆さんのご参加お待ちしています。 |
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